烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)

 如来が怒りの姿に変化して衆生を正しい道へ導く密教の仏尊で、強烈な火焔で穢れを焼き尽くす尊格として知られいる。不浄を転じて清浄となす働きを持ちこれらの特徴により、心の浄化はもとより、日々の生活のあらゆる現実的な不浄を清める功徳があるとする幅広く解釈され、あらゆる層の人々に信仰されてきた火の仏である。単に不浄を清浄とするというだけでなく、不浄に触れることを厭わず、その中に入り込んで衆生を救済する仏であることが経典中では強調される。烏枢沙摩明王は不浄を焼き尽くし清浄に転じる存在であると同時に、病気平癒、豊穣、降雨、財宝獲得、怨敵調伏、相愛成就など多方面にわたる利益を与える存在として信仰された。また、この明王は、(妊娠した人の)胎内にいる女児を男児に変化させる力を持っていると言われ、男児を求めた平安時代の公家に広く信仰されてきた。烈火をもって不浄を浄化することから、寺院の便所に祀られていることも多い。